イエイツの詩ⅰ~ある政治囚
子供の頃から辛抱を知らなかった彼女も
ついにはそれを存分に身につけ
一羽の灰色の鴎がいまは恐れげもなく
舞いおりて、彼女の独房にとまり
彼女の指の触れるにまかせ
指さきから餌を啄むのだ。
あの長い翼に触れるとき
彼女は思いおこすだろうか━━━
彼女の心が苦い一片の抽象物と化し
彼女の思いが大衆の憎しみと化し
盲人が盲人を率いて溝に転げ落ち
ともに泥水を呑む以前の━━━あの年月を。
もう遠い昔 バルベン山麓の
狩場へと馬を駆る彼女を━━━
青春の孤独の烈しさに燃える
近郷きっての美人を見たとき
彼女の清冽な存在に化した思いをしたが━━━
岩間に育ち 波間にうかぶ鳥のよう
波間にうかぶか、空に均斉をとる鳥━━━
高い岩の上の素から
はじめて飛びたって
嵐に揉まれる胸の下に
波底の叫びをきき
雲深い空を見つめながら━━━。
ある政治囚~(『イエイツ詩集』より/前川俊一訳)
このブログに到着する検索ワードで、圧倒的に多かった「ゲバルト・ローザ」。
最近は、産経新聞の金曜日の連載『さらば革命的世代』を楽しみにしている。
丁寧に取材されたそれらの記事を読んでいると、私がブログで『あのへんの時代』について“彷徨”った、当時の感じ方に、輪郭が出てきたような気がする。
はっきりと分かることは、揺れていた熱い『あのへんの時代』ですら、イエイツの詩の語りを越えていないということ。
…もしかすると、世界も社会も人生も、要すれば、全部イエイツの詩で片付くのかもしれない。
このところ、引越しの準備をしていて、ふとイエイツの詩をぱらぱらを繰ると、この詩が飛び込んできた。
誰とは言わない。でも、「この詩は、あなたのために書かれた詩ではないか?」と言いたくなる、あの高名な女闘士に捧げてみたい。
