2008-12-24

イエイツの詩ⅰ~ある政治囚

子供の頃から辛抱を知らなかった彼女も
ついにはそれを存分に身につけ
一羽の灰色の鴎がいまは恐れげもなく
舞いおりて、彼女の独房にとまり
彼女の指の触れるにまかせ
指さきから餌を啄むのだ。

あの長い翼に触れるとき
彼女は思いおこすだろうか━━━

彼女の心が苦い一片の抽象物と化し
彼女の思いが大衆の憎しみと化し
盲人が盲人を率いて溝に転げ落ち
ともに泥水を呑む以前の━━━あの年月を。

もう遠い昔 バルベン山麓の
狩場へと馬を駆る彼女を━━━
青春の孤独の烈しさに燃える
近郷きっての美人を見たとき
彼女の清冽な存在に化した思いをしたが━━━
岩間に育ち 波間にうかぶ鳥のよう

波間にうかぶか、空に均斉をとる鳥━━━
高い岩の上の素から
はじめて飛びたって
嵐に揉まれる胸の下に
波底の叫びをきき
雲深い空を見つめながら━━━。

ある政治囚~(『イエイツ詩集』より/前川俊一訳)

このブログに到着する検索ワードで、圧倒的に多かった「ゲバルト・ローザ」。

最近は、産経新聞の金曜日の連載『さらば革命的世代』を楽しみにしている。
丁寧に取材されたそれらの記事を読んでいると、私がブログで『あのへんの時代』について“彷徨”った、当時の感じ方に、輪郭が出てきたような気がする。

はっきりと分かることは、揺れていた熱い『あのへんの時代』ですら、イエイツの詩の語りを越えていないということ。
…もしかすると、世界も社会も人生も、要すれば、全部イエイツの詩で片付くのかもしれない。

このところ、引越しの準備をしていて、ふとイエイツの詩をぱらぱらを繰ると、この詩が飛び込んできた。
誰とは言わない。でも、「この詩は、あなたのために書かれた詩ではないか?」と言いたくなる、あの高名な女闘士に捧げてみたい。

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イエイツの詩ⅱ~老人どもが怒り狂ってわるいか?

老人どもが怒り狂ってわるいか?
長生きをするうちには、確かな蚊鉤釣師の
手首をしていた好ましい若者が
酒くらいのジャーナリストに変るのも見る、
端から端までダンテを読んだ娘が
やがて馬鹿に子供を生まされるのも見る、
ヘレネーのような美女が社会の福祉とかを
夢見て荷車によじのぼり、金切声で喚くのも見る。
運しだいでは善人が飢え死にもするし、
悪人でも出世をするのが世のつねだと思い知る。
光をあてた幕に影がうつるように、
身辺の者らがくっきりと姿をあらわしても、
断ち切られずにすむ幸福な精神のお話なんぞ、
出発にふさわしい結末なんぞ、ただのひとつも
見あたらぬのが世の習いだと知っている。
若者たちはこういう話を何ひとつ知りはすまい。
じっと世間を見てきた老人どもは知りぬいている。
若者たちが古い書物の語るところを知るときに、
それよりいい目にあうはずがないのを知るときに、
老人が怒り狂うわけをさとるのだ。
(『イエイツ詩集』より/高松雄一訳)

ウィリアム・バトラー・イェイツ(William Butler Yeats, 1865年6月13日 - 1939年1月28日)は、アイルランドの詩人、劇作家。イギリスの神秘主義秘密結社黄金の暁教団(The Hermetic Order of the Golden Dawn)のメンバーでもある。ダブリン郊外、サンディマウント出身。神秘主義的思想をテーマにした作品を描き、アイルランド文芸復興を促した。日本の能の影響を受けたことでも知られる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

イエイツの詩の「老人」は、まだ怒る元気があるのだから大したものだ。

とある自治体の、リタイアした団塊世代を地域の活動に取り込む企画のセミナーのレジメを見て、思わず吹いた。

・階級闘争はしない
・理論を人に押し付けない
・言うだけではなく、行動に移す
・「生涯現役」と先頭に立とうとせず、後の世代を押し上げる
…etc

公の機関で、なんて歯に絹着せぬことを書いてしまっているのか、と。
しかし、この企画はとても好評らしい。
薄気味悪い偽善的な、当たり障りの無いキャッチフレーズより、この方が『あのへん』の世代には好感を持たれたのだと思う。

メリークリスマス。

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2009-09-30

「変な人」=「先見の明」

「あのへんの時代」のゲバルト趣味者の小父さんが、三島の自害を知ったのは四日市付近だったという。(
一体その時、何の用事で、どこへ向かわれている途中だったのか、前からお伺いしたかったので、1968の掲示板で先頃お尋ねしてみたところ、以下のようなお答えを頂いた。

私の行動は国家機密なのでお答えできません。
 と、言うよりも前後の記憶が飛んでいます。
 よくあることです。
 割腹は昭和四十五年(1970)11月25日。
 その頃取った資格の記録が残っていました。
 危険物・自動車整備士・潜水士など10種類。
 受講は1970年だと思う。
 どれかの受験で上京中だったと思います

…一年間にそんなにたくさん資格を取れるなんて、芸達者だ。

三島由紀夫を、ずっと「変な人」だと思っていたが、ようやく最近になって「先見の明」のあった人なんだと理解した。
すると小父さんから、

「変な人」=「先見の明」ですね。
 凡人は自分と同程度の人が普通の人だと「思い込み」ます。
 当然「先見の明」のあるうららさんは「変な人」です

と、おホメいただいた。
下の動画では、小父さんが熱く青春を語っている。

三島関連では、別の方から、

氏の作品では「豊饒の海」が好きでした、輪廻転生と2・26が。
 彼が提出した最高作品は彼の首だったのでしょう。
 最後までテメェの美学を見せつけたかったのかな?
 彼が東大に行って「議論」を噛まそうとした点で
 評価する向きもございますが、大向こうを狙う只の貴族趣味?(笑)
 なんで日大全共斗の巣窟に行かなかったのかな。
 そしたら腹切りも、もっとカッコよかったのに
」…

などというお声も拾わせていただきました。
私がまだ生まれていない時代の話だけれど、様々に皆思いがおありなのだと。

実は私はまだ、三島由紀夫の作品を読んだことが無い。
幼い頃、山口百恵と三浦友和の『潮騒』をテレビでちらっと見たのだが、それがちょうど、雨宿りをしていて鉢合わせた二人が裸で抱き合う、絶頂シーンだった。
幼かったので、あの百恵ちゃんが「そんなこと」を…!と、あまりに衝撃がキツかったため、三島由紀夫は私の中では単なる脳の中のヨゴレに過ぎなかったのだ。

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